怪我というのは本当に突然襲ってくるものだと医者をしていてつくづく思う。
当院には毎日のように怪我をされた子供がやってきます。
治療においてはスタッフ共々なるべく痛い事をしないように、子供に病院は怖いという恐怖心を植えつけない様に心がけています。
でも怪我の程度によってはどうしても痛い事をしなければならない時もあるのです。できることなら避けたいですが例えば顔に創がパックリ開いた時など、この一時の我慢をしてもらわないとその子にとっては一時ではなく一生の創になってしまいます。そのためにも綺麗に傷跡が目立たない様に処置をする必要があります。
聞き分けのよい子、強い子は問題ないのですが乳児、幼児、暴れる子は処置するだけでも大仕事となってしまいますし大暴れして目などに針が・・・大変危険です。特に口の中を縫合する時はこちらの指も危険です。
乳児、幼児、暴れる子に登場するのがこの蓑虫(ミノムシ)くん。手足を伸ばしたまま布でミノムシのようにくるくる巻きます。そうすることで手足が抑制できあとは頭部を固定するだけで安全に麻酔の注射や縫合が可能になります。(中には引田天功の様に大脱出をする子がいますが・・・)ほとんど小学校低学年までですが時には大暴れする中学生にも使います?!
写真をみて「ひどい!」と思われる親御様がおられると思いますが「安全」「綺麗に縫合」にご理解下さい。
縫合処置の時、ほとんどの病院がそうですがお母さんは処置室からいったん外に出てもらい処置を行います。これは密室の行為として訴訟に備え何かを隠蔽する為では無く子供の精神心理学的に意味があるようです。
子供にとっては縫合処置をされんとする時、周りの白い服を着た大人は恐怖の何者でも無いようです。その中に唯一自分の身方の母親がいたら必ず子供は母親に助けを求めます。でも処置が始まってその最中も母親には助ける術はありません。そばにいるのに自分を助けてくれない母親、この時点で母と子供の信頼関係に傷がつくらしいのです。そこで泣き続ける子供に「頑張って!」って声をかけようものなら子供はさらに強く泣き出し暴れ無駄な出血をし、より処置をしにくくなります。「処置が終わってお母さん、子供に頑張ったね!って抱きしめてあげて下さい。」これが白い服を着た悪者と自分を守ってくれ頑張った事に自分をほめてくれた母親、といういい物語の完結だそうです。
なるほど・・・、しかし子供と親の関係がそう簡単に一回のもつれで傷が入りつづけるとはとうてい思えません? でも私が一番怖いのは、隣で励まし続けるお母さんが視覚的に入る我が子の修羅場に耐えきれず失神して倒れてしまう事、お母さんを処置室に入れると結構多いのです。
親が思うほど子供は弱くないようです。子供の持つ順応性、相手が攻撃性でないと本能で察知してもらえればこちらのもの、ほとんどの子の場合、処置をしながら楽しく話をさせてもらってます。アンパンマンのこと、プリキュアのこと、DSのこと、頭の中がそちらに向くとほとんどの子供は処置中でも夢中で話してくれます。(食べ物ならカレー、マクドナルド。季節物ならサンタクロースは絶大です・・・)
中には聞いてはならない家庭の話もどんどんしてくれる(女の子に多い)おしゃべりさんもいます。 (^_^;
もちろん我々医療従事者は個人情報守秘義務に努めます (^_^)
by 院長