2009年5月24日日曜日

新型インフルエンザに動揺しない為のエビデンス その③


新型が流行すると青壮年層の被害が甚大となるのには理由があります。


☆★☆この前診察で「あれは若い人しかうつらないんでしょ?」って言っていた高齢者の言うことはなまじっか嘘ではなかった?!☆★☆




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1918年から大流行したスペインかぜでは青年・壮年層を中心に世界中で4000万人の死 亡者が出ました。今回の新型インフルエンザでも初発地のメキシコでは高齢者に被害が 少ない一方で若年層に大きな被害が出ています。我が国ではこれについて、若年層では 炎症反応が過剰に発現してサイトカインストームによる被害が拡大するためとの見解も あります。しかし、スペインかぜだけでなく、その後のアジアかぜや香港かぜの際にも 初期には若い年齢層に被害が多く見られ、数年後に被害は高齢者中心に移行することが 観察されています。 

高齢者の多くは過去に型の変異したインフルエンザの洗礼を何度も受けたため免疫の メモリーがありますが、若年層ではそれが乏しいため新型が流行する初期には被害が甚 大となるものの、数年して若年層の多くが免疫を保持するようになると全年齢層がほぼ 等しく免疫を保持するようになり、その結果、相対的に抵抗力の弱い高齢者に被害の中 心が移って行くと考えられています。例えば、スペインかぜでは、高齢者の死亡が少な かったことが報告されています2)が、1873年以前に同じH1 サブタイプの流行があったと 推測されています8)。また香港かぜでも、当時77歳以上の高齢者では死亡が少なかった のですが、それは1892年以前のH3 サブタイプの流行の影響と考えられています2)。 

今回のS-OIVにおいても、高齢者の感染者、重症者が少ないことが注目されています。 いずれにしても、来るべき新型インフルエンザの蔓延期には通常の季節性インフルエン ザの場合に加えて若年層のインフルエンザ患者が多数発生して医療機関を受診するよう になることが予想されますので、その対策が必要です。 

2) Richard SA, Sugaya N, Simonsen L, Miller MA, Viboud C : A comparative study of the 1918-1920 influenza pandemic in Japan, USA and UK: mortality impact and implications for pandemic planning. Epidemiol Infect. 2009;12:1-11. 


8) Miller MA, Viboud C, Balinska M, Simonsen L: The signature features of influenza pandemics ― implications for policy. N Engl J Med. 2009;1056:903-6. 



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